チップ、またはグラチュイティ(gratuity)とは、サービス業従事者への感謝の意を示すために客が支払う追加の金銭です。十分なサービスを受けた際に賃金を補う方法として広く利用されていますが、文化や地域によって慣習や期待額は大きく異なるため、旅行者や現地の人にとって混乱や興味の種にもなります。
本記事では、チップの定義、各種サービスでの目安、文化による違い、自動加算チップの仕組み、世界各地の慣習を詳しく解説します。さらに、米国・カナダでの一般的なチップ額のガイド、いつなぜチップが必要になるのかについてもご紹介します。
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チップとは?
チップ(グラチュイティ)は、顧客がサービス業従事者に対して、優れたサービスへの感謝を込めて支払う追加の金銭です。金額は顧客の裁量に委ねられ、提供されたサービスの質に応じて決まります。世界の多くの地域で一般的ですが、受容度や期待額は国や地域によって大きく異なります。
チップはサービス業従事者の収入を補う重要な役割を果たします。レストランのサーバーやタクシー運転手、ホテルスタッフなど、多くの従事者がチップを大きな収入源としています。特に米国では、最低賃金を下回る時給で働きながらチップに頼って生活するスタッフも多く、チップが収入の大部分を占める場合もあります。

文化によるチップ慣習の違い
チップの習慣は世界共通ではなく、国や地域によって異なります。サービスの一環として当然視される場合もあれば、そもそも不要とされることもあり、文化的な態度は多様です。
米国・カナダのチップ事情
米国やカナダでは、チップは慣習であり、ほぼ期待されています。レストラン、バー、ホテルなどのサービス業従事者は収入の多くをチップに依存しています。レストランでは通常、合計金額の15%~20%が目安ですが、サービスの質次第でそれ以上にする場合もあります。
大人数のグループではチップが自動で加算される場合もあるため、請求書を確認してすでにチップが含まれているかどうかをチェックすることが大切です。
東アジアにおけるチップ
一方、日本など東アジア諸国では、チップは失礼にあたる、または不要とされることが多いです。これらの文化では、従業員に適切な賃金が支払われ、サービスは職務の一部と考えられています。そのため、チップを渡すことは「十分に支払われていない」と示唆することになり、相手を不快にさせる場合があります。
たとえば日本では、優れたサービスは当たり前とされており、ホスピタリティの文化が深く根付いています。中国や韓国でも同様に、チップはほとんど行われず、相手を戸惑わせることがあります。
ヨーロッパのチップ慣習
ヨーロッパ各国でも慣習はさまざまです。英国では必須ではないものの、感謝の意味で10%~15%程度を残すのが一般的です。フランスではサービス料が請求書に含まれていることが多いものの、端数を切り上げたり少額を渡すことは一般的です。
スペイン、ギリシャ、イタリアなど地中海諸国では、レストランで端数を切り上げるなど控えめながらチップを残す習慣がありますが、強制ではありません。
自動加算チップについて
大人数のグループ向けのレストランなどでは、自動的に18%~20%程度のチップを請求書に加えることがあります。これは大人数を相手にするサービスの負担を考慮し、従業員への適正な補償を確保するためです。
ただし、請求書にチップが含まれていることに気づかず、さらに上乗せしてしまう場合もあります。必ず請求書を確認し、すでにチップが加算されているかどうかを確認しましょう。
サービス別チップの目安
チップの額は受けるサービスの種類によって変わります。以下は一般的なガイドラインです。
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レストラン・バー
米国・カナダではレストランで合計金額の15%~20%が標準です。バーテンダーにはドリンク1杯あたり1~2ドル、または合計の10%~15%を目安にします。サービスの質や店舗のレベルによっては、より多く渡すこともあります。 -
フードデリバリー
食品配送には15%~20%が一般的ですが、注文規模や手間に応じて変わります。小規模な注文では3~5ドル程度の定額チップも喜ばれます。 -
ホテル
ルームサービスには請求書に含まれていない場合、15%~20%が目安です。ハウスキーピングには1名あたり1~2ドル/泊程度が一般的ですが、サービスの質やホテルのランクで増減します。 -
自動車関連サービス
整備工や車内清掃などではチップは必須ではありませんが、良いサービスを受けた場合は5~10ドル程度を渡すと喜ばれます。 -
引越し・配達スタッフ
必ずしも期待されませんが、荷物の運搬や設置を丁寧に行ってもらった場合は、1人当たり5~20ドル程度が目安です。 -
ヘアサロン・スパ
カットやマニキュア、マッサージなどパーソナルケアでは、サービス料金の10%~20%が一般的です。サービスの質や価格帯によって調整してください。 -
タクシー・リムジン
運賃の15%~20%が目安ですが、短距離のタクシー利用では運賃を繰り上げて渡すことも一般的です。 -
ツアーガイド
ツアーガイドには1人あたり1~5ドルが目安です。オプショナルツアーやプライベートガイドの場合は、より多めに渡すと喜ばれます。
