ワンレップマックス(1RM)を知ることは、エリートパワーリフターだけのものではなく、賢明なトレーニングの基礎です。筋肉をつける、持久力を高める、停滞を避けるなど、1RMを理解することで、あらゆるトレーニングを精密に調整できます。今回はその意味、測定方法、そして初心者からオリンピアンまでのアスリートが安全かつ効果的に進歩するために活用している方法を探ります。
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ワンレップマックス(1RM)とは?
ワンレップマックス(1RM)とは、特定のエクササイズで1回の完全な繰り返しとして持ち上げられる最大重量のことです。主にベンチプレス、スクワット、デッドリフトのような全身の協調と筋力が求められる複合種目で使われます。この概念はスポーツ科学や筋力トレーニングで、アスリートの絶対的な筋力、つまり一回の爆発的な努力で発揮できる最大の力を測る基準として長く用いられてきました。
筋持久力が軽い重量で何回できるかに注目するのに対し、1RMは最大パフォーマンスを示します。単一のリフトにおける筋力の限界を表します。興味深いことに、1RMは種目によって異なり、多くの人は筋群の動員や生体力学の違いでデッドリフトの方がベンチプレスよりも重い重量を挙げられます。
ストレングスコーチや運動生理学者は1RMのデータを用いて、筋肉増強、パワー向上、あるいは怪我の回復など、個々の目標に合わせたトレーニング負荷を処方します。これは科学的根拠に基づくプログラムの基礎であり、進捗を追跡するための重要な指標です。

一般的な1RM推定式
持ち上げられる重量と回数から1RMを推定するために、複数の計算式が開発されています。ここでは代表的な推定式を紹介します。
エプリー式
エプリー式は最もよく使われる1RM推定方法の一つで、ほとんどの種目でシンプルかつ効果的です。式は以下の通りです:
1RM = 持ち上げた重量 × (1 + 0.03 × 繰り返し回数)
例えば、100kgを5回持ち上げた場合の推定1RMは:
1RM = 100 × (1 + 0.03 × 5) = 100 × 1.15 = 115kg
ブジッキ式
ブジッキ式もよく使われる推定方法で、特定の重量で行った回数を考慮します:
1RM = 持ち上げた重量 ÷ (1.0278 − 0.0278 × 繰り返し回数)
例えば、100kgを5回持ち上げた場合の推定1RMは:
1RM = 100 ÷ (1.0278 − 0.0278 × 5) = 100 ÷ 0.89 = 112.5kg
ロンバルディ式
ロンバルディ式は少し複雑で、指数を用いています:
1RM = 持ち上げた重量 × (繰り返し回数)^{0.10}
例えば、100kgを5回持ち上げた場合:
1RM = 100 × 5^{0.10} = 100 × 1.123 = 112.3kg
安全に1RMを推定する方法
1RMを求めるために最大重量に挑戦して怪我をする必要はありません。経験豊富なリフターは監督下で実際の最大値を試すこともありますが、特に初心者は推定の方が安全で効果的です。嬉しいことに、絶対最大重量を持ち上げずとも、かなり正確な推定が可能です。
一般的な方法はエプリー式やブジッキ式のような反復回数ベースの計算式を使うことです。最大重量を試さず、扱える重量で5〜10回繰り返し持ち上げた数字を式に当てはめることで推定1RMを算出します。シンプルで効果的、なおかつ安全です。
推定1RMが分かれば、より賢明なトレーニング設計が可能です。例えば筋肥大が目標なら、1RMの約75%の重量でトレーニングします。重量単位がポンドやキロで異なる場合は、ウェイトコンバーターのようなツールが役立ちます。経過観察には体脂肪計算ツールや消費カロリー計算ツールを併用することで、筋力や体力の全体的な向上を把握しやすくなります。
💬 「無理に最大重量を試すのをやめて、反復数から計算するツールを使うようになりました。おかげで怪我せずに筋力を伸ばせています。」 – ローレン・B、フィットネス愛好家
大事なのは、ただ頑張るのではなく賢くトレーニングすることです。

1RMとトレーニング目標の違い
ワンレップマックス(1RM)は自慢の数値ではなく、目的に応じたトレーニングプログラムを組むための重要な道具です。目標によって1RMの異なる割合を用い、筋力、筋肥大、持久力を狙い分けます。以下はNSCAの指針やNIH.govで発表された研究に基づく概要です。
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トレーニングの焦点 |
一般的な目標または指標 |
1RMの割合 |
目標セットあたりの反復回数 |
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最大筋力 |
「重い重量を少回数で挙げる」 |
85〜95% |
2〜6回 |
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爆発的パワー |
「力強く速く動かす」 |
80〜90%(オリンピックリフティング) |
1〜3回(低ボリューム) |
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筋肥大 |
「テンションをかけてサイズを増やす」 |
65〜80% |
6〜12回 |
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筋持久力 |
「疲労に抵抗するためのトレーニング」 |
50〜65% |
12〜20回以上 |
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リハビリ・一般体力 |
「安全に回復しつつ筋力維持」 |
40〜60% |
15回以上(低強度) |
出典:国立医学図書館(NIH)。プログレッシブレジスタンスエクササイズのガイドライン
🔎 ご存知でしょうか:オリンピックリフターは一年の大部分を75〜85%の1RM重量でトレーニングし、100%の全力は競技の場に取っておくことが多いです。
1RMに基づきトレーニング強度を調整することで、重さを増やす、サイズを大きくする、健康と機能性を維持するなど、目標に沿った効率的な取り組みが可能です。この方法は年間を通じてトレーニングの重点を変えるピリオダイゼーションにも不可欠です。
1RMの限界
ワンレップマックス(1RM)は大変役立つものですが、魔法の数字ではなく完璧でもありません。誤解や注意不足によって混乱を招いたり怪我につながることもあります。
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エゴリフティングは逆効果になる:数字を追い求めるあまりフォームが崩れ怪我をしやすくなります。1RMはプライドのためではなくトレーニングの指針とすべきです。
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疲労によって結果が歪む:疲れていたり回復不足の場合、正確な筋力を反映しません。休息とタイミングが重要です。
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高負荷でフォームが崩れやすい:最大重量に近づくほど技術が乱れやすく、特に初心者は要注意です。フォームの乱れは安全面のリスクを高めます。
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1RMは毎日固定の数値ではない:睡眠、ストレス、栄養、脱水状態などで変動します。1RMが一時的に下がっても進歩が止まったわけではありません。
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初心者に必ずしも向いているとは限らない:初心者は真の最大重量を安全に扱うためのコントロールや自覚が不足している場合が多く、推定1RMを使う方が安全です。
最後に、1RMは固定されたものではなく、日々の状態によって変動するものと認識してください。あくまで目安として扱い、不変の基準とは考えないことが大切です。